特栽あら川の桃と土作り
和歌山県紀の川市桃山町は、あら川の桃の産地として有名です。この地で特別栽培の桃作りに取り組まれている生産者グループの皆さんがいます。
農薬の使用を慣行栽培比で7割削減し、化学肥料未使用の栽培を20年近く続けられています。特別栽培では、環境保全と炭素循環の土作りの上で、雑草を刈って土に戻し、米ぬか、モミガラで作る米ぬかボカシを300㎏/10a以上施用したり、モミガラ単体と有機肥料を混ぜて施肥したり、様々な工夫をされて、土作りをされています。9年ほど前からはバチルス菌で発酵処理した下水道由来肥料も使用され、玉肥りがよいなどの効果が報告されています。
下水道由来肥料は、資源の少ない日本にあって、貴重な資源として注目されています。国交省が食と下水道をつなぐ「ビストロ下水道」プロジェクトとして全国的に取り組みが広がっています。下水道資源を使ってできた青果物などは「じゅんかん育ち」と呼ばれています。
定期的な防除は、キトサンや微生物活性液、ミネラルなどを中心にして、農薬の使用は最小限にする努力をされています。キトサンは機能性展着剤としての作用により、病原菌のバイオフィルムを破壊し、感染予防に役立つという研究報告があります。※農薬使用:地域の慣行栽培比7割減
この写真は、ちょうど雑草を刈ったところです。雑草は刈るだけでなく、梅雨時には水を吸いあげてくれたり、夏の強い日差しによる乾燥から土を守ってくれる役目など、草をコントロールすることで栽培に活かし、味方につけています。土は、炭素豊富な状態では、スポンジのような機能をしてくれますので、梅雨時には排水、干ばつ時には保水の機能を果たしてくれます。
草が枯れると、絨毯のように土の表面を覆い、その下には、枯れた植物を分解する昆虫や微生物の生態系があります。ここでは、ヤスデがたくさん動き回っていました。ヤスデは腐生性の昆虫で、枯れた植物をエサにして、分解を進めてくれます。
こちらの桃農家さんのお孫さんが畑に入って来て、ここの畑はフカフカだねと言ったという話を聞き、ほのぼのとなりました。
あら川の桃は、関西では人気No.1.ブランドですが、周辺には栽培技術を高めて味や糖度で勝負し、ブランドを確立しはじめている桃もあります。ブランドに胡坐をかくことなく、安全で美味しい桃を届けたいという生産者さんのこだわりの一部である資源循環についてご紹介しました。
あら川の桃:
和歌山県紀の川市は西日本一の桃の産地です。その中でも、「あら川の桃」は、地質と気候に恵まれた桃山町で生産される桃だけに与えられる特別な名称(登録商標)で、昔から高品質な桃の代名詞として親しまれ、夏の贈り物として人気です。